派遣法改正(最長3年)に伴うIT業界への影響

2014年3に労働者派遣法の改正案が閣議決定され、2015年に施行されることになりました。今回の改正では「自由化業務であっても、派遣労働者が変われば3年を超えて派遣労働者を受け入れることが可能になった」ことが含まれているため、「派遣労働者の増加」、「派遣社員として身分が固定化される」という懸念が出ています。

派遣期間制限による影響

派遣労働者を活用することが多いIT業界においても同様かというと、ちょっと事情が違うように感じます。IT業界では事務作業などで派遣労働者を活用することもありますが、それ以上に多いのが専門26業務として3年を超えても派遣を受け入れているケースです。これまでは専門26業務の一つ、「情報処理システム開発関係」として派遣労働者を受け入れていた場合は3年を超えた派遣も可能だったのですが、今回の改正により専門26業務と自由化業務との違いななくなり、3年を超える派遣ができなくなってしまいました。

IT業界の場合は3年を超えるような大型プロジェクトも多いので、そのようなケースでは派遣労働者に依存しにくくなってきます。また、この業界では技術者個人が保有しているノウハウに依存することも多く、派遣契約書に記された業務としては誰でもできることであっても、「あの人でなければ業務が回らない」というケースも少なくありません。

このことから考えると、「派遣が常態化する」という業種も多い中で、「IT業界では労働者派遣が減少する」という可能性の方が高いような気もします。しかし、「それでは派遣労働者を活用するのは減らしましょう」と簡単にいえないほど、IT業界ではで派遣労働者の占める割合は高くなっています。

法改正にどう対応するか

1.派遣から請負への移行

これはよく議論されていることですが、派遣契約から請負契約に移行することが考えられます。ただし、指揮命令権等の関係で「請負ではなく、派遣で対応して欲しい」という案件が事実なので、全てを請負に移行するというのは難しいかもしれません。

2.ノウハウの共有化

IT業界ではシステム開発標準の導入、スキルシートの導入などで個人に依存しない仕組みを導入しています。しかし、このような取り組みは大企業中心の取り組みで、中小企業になるとここまで対応している企業の割合は大幅に減ってきます。また、業務知識や設計技法等の「体系化されていない知識・可視化されていない知識」が多いように感じます。これらを可視化・共有化することで、派遣労働者が3年で交代できる体制を作ることも大切です。