中小企業のコロナ対策~厳しいのは再開してから

コロナに伴う緊急事態宣言が解除され始め、営業を再開する店舗も増えている。
営業再開は明るい話題といえるが、営業を再開することで今まで以上に厳しい状況に陥る事業者も増えてくるだろう。

損益分岐点からみた事業の評価

店舗休止中でも家賃負担が発生し、これが問題視されている。確かに売上がない中で費用(賃料)だけが発生するのであれば、賃料負担の分だけマイナスが発生する。

営業を再開してコロナ以前と同様の売り上げに戻れば収支がプラスに転じるが、「三密を避ける」事が重視されている状況では、直ぐに以前の売り上げ水準に戻ることは少ないだろう。

「売上が元に戻らないにしても営業を再開して頑張る」という店舗が多く見られるが、ここで気を付けなければならないのが、「再開して頑張る」事が一層厳しい状況を招く可能性があるという点である。

値引き・サービスを多用し過ぎていないか

折角来店したお客様に対して「一品おまけ」であったり、客数確保のために「割り引きメニューの提供」という対応も良く見られる。
このような取り組みも悪くはないが、あまり度が過ぎると損益分岐点を遠ざけることになってしまう。
「一品おまけ」は売上が変わらないとしても費用線の傾きが大きくなり、損益分岐点が遠くなる。
「割り引きメニューの提供」は余分な費用な発生しないにしても売上高線の傾きが緩やかになり、これも損益分岐点が遠くなり、利益を得るためにはより多くの売り上げが必要になる。

稼働率が低すぎないか

営業再開当初は「営業時間を短縮」、または「席の間に距離を確保」等の対応により、十分な稼働率を確保できない。
特に、「席の間に距離」を取らざるを得ないと、いくら頑張っても来店客数に制約が生まれてしまう。
こうなると、コロナ前と全く同じ客単価を獲得できたとしても、物理的な制約として損益分岐点に届かないという事象に陥ってしまう。

努力を無駄にしないために~事業構造を把握する

「そう言われてもどうしようもない」という意見もあるだろうが、まさにその通りである。どうしようもないことだが、こういう構造に陥ることを意識しするのが大事なことである。
また、可能であれば「どのくらいのマイナスになるのか」を自分自身で把握できるようにしておいた方が良いだろう。
当初は「頑張っても利益が出ない」事が多発するかもしれないが、危惧すべきは「営業しない時よりもマイナスが大きい」ことや、「営業すればする程、マイナスが膨らむ」という事態である。

「このような事は起こりえない」という意見もあるかもしれない。
が、実際に収益面で苦戦して経営相談した事例からみて、「損益分岐点が存在しない」または「損益分岐点が届かないくらい遥か遠くにある」という事業者は多い。
営業再開に向けた努力がマイナスを削減する方向ではなく、マイナスを拡大する方向に向かわないように、自社の収益構造を確認できるようにすることが重要である。