レガシーシステムはDXの阻害要因か?

レガシーシステムは悪者か

DXという概念が発表された時から「レガシーシステムは刷新すべき」的なことがDXレポートに記載されたこともあり、今や「DX レガシーシステム」で検索するとネガティブな記事しか見つからず、「レガシーシステムは悪いもの」という論調が蔓延している。本当にレガシーは悪いものだろうか。

IPAが公表していた「プラットフォーム変革手引書」も11月に「DX実践手引書 ITシステム構築編 レガシーシステム刷新ハンドブック」に名称変更された。
ここから見てもレガシーシステムは刷新すべき対象のようだが、この手引書を読んでみる「レガシーシステムは駆逐すべし」的な事は全く書かれていない。システム全体の構造や機能設計の考え方が書かれているが、レガシーシステムを設計していた時も考え方は同じである。

レガシーシステムの問題点がどこにあるかというと、
「保守要員が確保できなくなっている」
「属人化やドキュメント不足などでブラックボックスしている」
「変化に対応できない」
「保守費用が高額」
等が挙げられる。確かに、レガシーシステムではこのような問題点が発生しやすい。が、新しいアーキテクチャでシステムを再構築することが、問題解決に直結するとは限らない。

実際に、「提案書以降は更新したドキュメント類が提供されず、最新の構造が分からない」「機能は追加できるがシステムもブラックボックス化し、ベンダーの特定担当者しか保守できない」「月々のメンテナンス費用が積み上がり費用負担が肥大している」という話は多い。このようなシステムは製造年月日が新しいだけで、製造された時から問題視されているレガシーシステムと同等の問題を抱えていると言える。

真に改善すべきこと

以前のDXレポートは「レガシーシステムは刷新すべきもの」という論調が強かったが、先に挙げた「DX実践手引書 ITシステム構築編」も 「プラットフォームデジタル化指標」も「レガシーシステム=悪」とは書かれていない。
レガシーシステムで発生した「保守しにくい状態になること」「システム構造や機能を把握できなくなること」が問題であり、このような状態に陥らないためにどのような点に留意すべきかが記載されている。

残念ながら、詳細まで読めばその意図は通じるのだが、タイトルだけを見れば「レガシーは排除するもの」と伝わりかねない。また、昨今の状況ではCOBOLをベースにしたレガシーシステムに限らず、「古いシステムはDXのために排除すべし」的なセールストークが使われている側面もある。

重要なことはビジネス環境の変化に対応することで競争優位を築くことであり、そのためには変化に対応しやすい情報システムが必要なのである。古いシステムを最新化することでも一時的には同じことを実現できるが、「変化に対応する」ことを考慮しておかないと数年後には「変化に対応できないシステム」になるだけである。