「経営に役立つITを・・・」というリクエストは失敗しやすい

何が、難しいのか

 企業の要望で「経営に役立つITを・・・」というのはよくあるリクエストである。しかし、このような要望は失敗に終わることの方が多い。誤解を招く表現なので厳密に表現すると、「ITを経営に役立てる」ことは難しくないのだが、「経営に役立つITを導入して欲しい」というリクエストを成功させるのが難しい。

なぜ、難しいか

 「経営に役立つITを導入して欲しい」というリクエストを誰が出すかというと、その殆どが経営者からの要望である。そして、このような要望を出すケースの殆どが『経営者自身が検討の場に参加しない』ということが多い。自分は検討に参画せずに部下に対して「経営に役立つITを・・・」というリクエストだけを出した場合はどんなに担当者が頑張ったとしても、そのプロジェクトが経営者の満足する成果を上げることは難しい。

どうすれば失敗しないか?

 なぜ、経営者が参画しなければならないかというと、従業員では経営として何をすべきかを判断できないからである。正確には分からないものの、「売上増加に繋がること」「コスト削減に繋がること」等を模索するが、本当に何が必要か、取り組むべき優先順位はどうなっているかは経営者自身でなければ判断できない。
 例えば、製造現場で働いている労働者であれば、現場で何に困っているとか、何をすれば効率が上がるかなどは即答できるだろう。これに対して、経営者に対して「今の製造現場を改善してください」と言ったところで労働者が望むような改善が図られるだろうか。現場を知らない経営者がやることと言ったら設備を最新化したり、休憩室を設けたりということをするかもしれない。それはそれで間違いではないだろうが、それが現場の作業者が最も望んでいる事ではないことの方が多い。これと同じように、経営を改善したいという要望があるのであれば経営者自身が主体的に関わることが必要だろう。