データを活用するなら組織改革も必要

データ活用に必要なものとは?

 DXではデータ活用の必要性が叫ばれている。データ活用には、活用しきれていないデータやプロセスを連携させて業務の効率化を図るというケース(データ活用)と、データ分析を行うことで今までに気づかなかった情報を見つけ出して業務改善につなげるケース(データ分析)がある。

 DXでは後者のデータ分析が注目を浴びることが多いが、継続的にデータ分析を機能させるには組織改革もセットで取り組むことが望ましい。組織改革というと「データを分析するセクションの新設」と思われるかもしれないが、もっと重要なのは分析部門を作ることよりも分析することを容認するように意識を改革することである。

データ分析にトライ&エラーはつきもの

 データを分析して業務改善に生かすには「データ収集→分析→業務改善」というPDCAのようなプロセスが必要になる。既存の販売データや在庫データを活用することで在庫を最適化したり、顧客データと販売データを活用することで売り上げアップにつなげた事例もある。

 実際にこのような取り組みを成功させた例は多いが、注意したほうが良いのは「分析した結果、既存の取り組みを否定する事が必要になった場合」である。このような時に方向転換することを認められる組織風土になっていないと組織内に不協和音が流れることになる。
 また、否定するのは他部門が行った活動だけでなく、自部門が行ってきたことを否定しなければならないこともある。例えば、データを分析した結果、「前回は分析結果を受けてこのような改善を行ったが、それがうまくゆかなかった。分析に考慮漏れがあったので今度はこのような改善をする」と方向転換することもありえる。これは決して悪いことではなく、データを分析してトライ&エラーで取り組むとは、そういうことである。

トライ&エラーを容認出来る風土が必要

 ただし、日本の場合はこのような考え方を受け入れない企業が多く、方向転換する場合に「前回の反省を生かす」ではなく、「誰の責任だ」という方向に話が進みやすい。更には周囲に忖度したり、「誰の責任だ」という話になるのを恐れてデータ分析結果に手心を加えるケースもある。実はこのようなことは珍しいことではなく、思い切ったデータ分析を行っていた部門自身が時間と共に最も保守的な組織になってしまうこともある。このようなことを防ぐためにもデータ分析を重視した際には、トライ&エラーを容認する組織風土への転換が重要になる。