統計資料から見た労働者不足へのアプローチ
人手不足に伴い生産性の向上が叫ばれて久しいが、果たして生産性向上は進んでいるのか?
数年前の統計資料になるが、厚労省の「労働経済の分析(令和元年版)」によると、人手不足に対して企業がどのような取り組みを行っているかのアンケート結果が掲載されている。
これによると「人手不足の緩和に向けて企業による取り組み」として最も多いのが「外部調達」である。つまり、労働者が不足したからその分の労働者を外部から補充しようという考え方である。
具体的には①の「求人募集時の賃金を引き上げる」や④の「中途採用を強化する」という取り組みが高い割合で実施されている。
「外部調達」以外の取り組みとして「内部調達」と「業務の見直し等」もある。
「業務の見直し等」の⑮とは「業務プロセスの見直しによる効率性の強化」を指しており、これが不足した人員構成であっても業務改善を通じて生産性を向上させるという取り組みに該当する。
我が国が抱える「労働人口の減少」という実態を考慮すると、年々減少傾向にある労働者を確保し続けようという動きよりも、少ない人材で業務遂行できるようにするという動きの方が高い割合になるべきだが、残念ながら企業の対応としては「人が少ないので人を補充する」という短絡的な動きが中心になっている。
人的資源に限りがある中小企業ほど生産性向上は重要課題である。
前述の統計は令和元年発表のものだが、同年から始められた経済産業省の中小企業生産性革命推進事業も丸三年を迎えようとしている。
途中、コロナの影響もあったが、3年を経過して我が国は変わったのだろうか。
補記・・・国の予算から見た労働者不足への支援状況
コロナの影響が大きくなった令和2年度の補正予算を見ると、第一次補正予算で雇用調整助成金関連に関する予算が8,330億計上されたのに対して中小企業生産性革命推進事業は700億、第二次補正予算では雇用調整助成金関連で7,717億、中小企業生産性革命推進事業は1,000億となっている。
単純比較はできないが、中小企業が生産性を向上させる取り組みよりも人を雇用し続けようという取り組みの方が手厚い予算になっている。これはコロナ禍に限らず、平時でも同様の傾向がみられる。
リスクのある生産性向上の補助金を狙うよりも、人を雇用し続ける助成金の方が受けやすいという状況も「人が足りないので、人を確保する」という動きになりやすい要因の一つだろう。